「結構 言えてるね」
僕たちタマオと桜子(おうこ)はチワワの女の子と男の子。今朝もタマオはパパに連れられて、桜子はママに連れられて、いつもの公園に来ている。
「タマオ君 出てこられて良かったね。何だか今日は逢えないかもって、心が騒いだの」
「桜子(おうこ)ちゃんの勘は当たっていたかもね」
「あら そうだったの? じゃ 危なかったね」
「そうだよ。昨日もパパ遅くに帰ってきてね そ~おと ベッドに入ろうとしたのさ。 するとママがむっくと 起き上がってさ
眼釣り上げてさ、大変よ。僕は始まるなと思ったら 案の定パパは寝かせてもらえなかったのさ」
「タマオのママって、とっても優しそうに見えているけどね。
やっぱり怒る時は怖いんだ」と、小声でヒソヒソ。
「そりゃそうさ。パパも悪いんだよ。ちょっと 電話しとけば良かったのに。今夜は急に食事要らなくなったってネ」
「桜子(おうこ)っちのママはひとり者だから そんな事でイライラする事はないけど やっぱり何か寂しそうにしている時があるの。
そんな時、桜子(おうこ) 無理やりはしゃいで ママを元気づけるの」
「へえ~ 桜子(おうこ)って、意外と優さしいんだ。僕のママもそんな風に優しかったらいいんだけどね。パパ、夕べ寝ていないんだよね。
ずい分とっちめられていたからね。しょっちゅう あんなに、とっちめられると家に帰って来るのいやになっちゃうよね」
眠そうなパパに連れられてタマオはパパに同情している。
「桜子(おうこ)、そんなの困まっちゃう。タマオがママとお散歩に出るのだったら 逢えなくなるもの。タマオのママは気まぐれでしょう? パパとママが仲良く出来る様に タマオも何か考えたら?」
「そうだよね。どうしたらいいんだろうね。」
「タマオのパパとママはみんなから、おしどり夫婦って言われているけど、家では違うんだね。人間ってみんな 仮面被って生きてるのね。いっそ桜子(おうこ)のママとタマオのパパが結婚すればいいにね。そしたら私達ずっと一緒にいられるものね」
タマオのパパが、突然くしゃみをした。チワワを通じて、挨拶を交わす様になっていた桜子のママは
「今日はちょっとお寒いですね」とタマオのパパに話かけた。
「それは、僕のママがあんまり可哀想だよ」と優しいタマオは心を痛めるが、あどけない桜子(おうこ)の観察力は 意外と真相を突いているのかもしれない。
チワワ達は今日も部屋の隅から 人間様を見透かしているのだ。
-fin-
2008.5.8
【課題】 おしどり夫婦と言うけど そうは思わない