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黒光りの営業マン

 今や誰もが目にする『くまモン』だ。
『くまモン』の秘密を教えて貰ったような感覚を抱き一層『くまモン』が可愛く思える。

 仕事から離れて約7年になるが、20数年前の50才代の頃、読む本はビジネス書やハウツウ物ばかりだった。成功するための近道はそんな所にはなかったが、人は未だにそこに鍵を求め続けているようだ。今はもっぱら小説ばかり読んでいる。
 でも長年の習慣で、すぐ「あの企業は何故あんなに成長するのだろうかとか、何故あの商品はヒットするのかしら」と、そこに目が行く。

 その一つにPRキャラクターの『くまモン』がある。私はそのユルキャラより産みの親である放送作家の「小山薫堂(くんどう)氏』に興味がある。
「どうして次々とヒット商品を生み出せるのか?」と、羨望とジェラシーを感じてしまう。

 東京の彼のオフィスを訪ねた人は口を揃えて「入り口が解らなかった」と言う。そのオフィスに隣接している小さなパン屋さんに訊ねたら、パン屋さんのレジの脇を通されてその奥にオフィスがあったそうだ。
 その仕掛けはサプライズだけでなく、地代の高い東京で受付を作らず、パン屋にしたと言うのだ。受付嬢の節約、そして受付をパン屋にして利益を上げる仕組みは天晴れと脱帽してしまう。

『くまモン』も、人を熊本に呼び込むだけの道具ではなく、熊本に住む人が熊本に誇りを持ち「熊本に生まれて良かった」と、思うようなコンセプトになっている。
 薫堂氏は、自分が完成した製品を作るのではなく、消費者が「こんな使い方も出来るワ」と言う様に、余裕を持たせて相手に考えさせる。ふり幅を広げる事を心がけていると言う。
今の学校教育にも言える事であるが、生徒に考えさせる仕組みとか、参加させると言う様な、方向に持って行ってほしい物だ。
 そんな訳で、育ての親は熊本県民が育てたそうだ。

 薫堂氏が考えて行く時は、まず「物語化」して行くらしい。ポスターに「熊だけど時には猫もかぶります」とか、「人畜無害の熊ですから捕まえないで」等と言う風に、読んだ人ポスターを見た人に面白さを搔き立てさせる。
まず関西から攻めたそうだ。道頓堀や大阪の観光名所に『くまモン』を出没させ『あの熊何?』と興味を持ってもらう。
 次は「大阪で失踪した熊を探して」と呼び掛け、見つけたらツイッターでつぶやかせる。そして大阪から「くまモン」に興味を持った人々を、徐々に熊本へと引き寄せてくる。なんと上手いやり方だろう。
 今や日本全国、いや海外からもお呼びがかかり、一人歩きし出した「黒光りの営業マン」は自然と商売につながり、まるで金を産み続ける「打出の小槌」になってしまった。

 小山薫堂万歳!! 小山薫堂天晴れ!!

-fin-

2014.8.1

【課題】 尊敬する物、人、事等

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