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小さな幸せ

 「貴方は人生最後の日に何をたべますか」と訊ねる「最後の晩餐」と言うテレビ番組がある。
 私だったら恐らくお茶漬けを選ぶだろうな。少々硬めの白いご飯に、山吹色が染まりそうなお茶を注ぎ、赤かぶらと、浅漬けのキュウリとキャベツのお漬物。たっぷりお皿に盛り少しお醤油をかけてサラサラと音を立てて頂く醍醐味。
 お茶碗は土物の分厚い焼き物ではなく、清水焼の軽くて唇に当たる所が薄くて繊細な器が良い。お箸は先の細い、やや長めの物。
 部屋には癒し系の音楽が聞こえるともなく流れている。お茶漬けを口に運ぶ音だけがサラサラサラ聞こえる。なんと幸せなひと時だろう。
 欧米人は音の出る食べ方を無作法と嫌う。気の毒な人種だ。日本人である事の有難さに感謝である。こんな小さな幸せを、この世の最後に自分へのプレゼントにしたい。

-fin-

2008年

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