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蟻さんの再登頂

 前略
 私の楽しい集いの一つに、速読仲間の「うにゅ会」と言うのがある。
 速読と言うと、誰しも「どれだけ早く読める様になったの?」と聞いてくる。それを聞かれると辛いものがある。要は脳の活性化の訓練をしているのであって、その成果が読書の速さに現れる人もあれば、運動神経が機敏になって時速150㎞の野球のボールを打てるようになった人もある。又前向きな気持ちが湧き出て来て、悲観的な考えが無くなったと言って喜ぶ人もいる。その他シンクロニシティーと言って、出会うべき人に、良いタイミングで出会えると言う不思議な引き寄せが、頻繁に起きている人もある。

つまり脳が退化しない様にと、その為のドリルを毎日積み重ね続けている仲間である。だから読書の速さが早くなったかと言う問には一番答えづらものがある。
 では、脳の訓練とはどんなことをするのかと言うと、脳が常にあたふたと慌てる状態を作り出す事なのだ。ルーチンな毎日の行動は脳が刺激されない。通勤の道や買い物の店も時には替えてみる。そうすれば脳があたふたするらしい。
 例えば何かのクイズにトライしてみる。そこでは正解を求めているのではない。
「あら? あら?」と脳が大変だと慌てる事が大事だと言うのだ。と言う事で脳が「うにゅうにゅ」と動き出すと言う意味で「うにゅ会」と名付けられたのだ。
 そこでは30代から70代までの職業の違う男女が、10人位毎月一度、食事会をしながら話し合うのだ。誰もがその集まりを楽しいと言って心待ちにしている。何故楽しいのかと反芻してみる。それは、新しい情報が貰える事、そして前向きな考えが飛び交う。小さな事でも集まる仲間はその人の長所を引出してくれて褒めてくれる。自分では欠点だと思っていた事も、そんな違う角度から見る事も出来るのかと勇気を貰う。とても居心地の良い場所なのだ。これが楽しいと言う表現になるのだろう。
 40年来の願望は、英会話が出来ると言う事だった。日常の事すら物忘れがひどくなり、「あれ、それ、これ」の会話になりがちな今となっては、これから頂上を目指して、よじ登る事を考えるより、すっぱりあきらめた方が、精神衛生上も良いと思いかけていたのだ。でも、「うにゅ会」の人々に感化されて、中学で使う英単語800字とドリルだけでも、覚えてみようと決心し直した。蟻さんが富士山に登る様な道のりだが。 
あれから1年、何度も断念し掛けた英語への再登頂は出来ましたか、佳音さん。

早々

-fin-

2013.1.27

【課題】 自分への手紙

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