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働き者の小人の嘆き

 吾輩は働き者の小人である。名前はまだない。
 儂(わし)の大家(おおや)は外村(とのむら)大志(たいし)。儂は店子の小人である。先ずは、その小人の説明をしておこう。
 ほとんどすべての人の心の中に、もう一人の自分と言う小さな子供が隠れておる。それは所謂潜在意識で、無意識の内に、その人の考えている様に働いてくれる不思議な力を発揮する自分の家来と言う訳だ。
 儂は小人ではあるが、ハワイ生まれの癒しの秘宝(ホ・オポノポノ)を持つ働き者じゃ。 それを知ってか体の各臓器達は儂の事を〝ポノ爺〟と呼ぶようになった。

 大志は親友と居酒屋へ行っては、夢を語る前向きな青年だ。だがどうしても願望を叶えたいと思う気迫に欠けている。大志は、好奇心が強く、上っ面の願望だけで、信念が無い様に思える。
 大志の夢は、コンピューター関係の仕事で、一旗あげたいと思っている。だからと言ってそのための準備になる様な努力もしている様子はない。
 親友の勇気君は、介護関係の会社を立ち上げようと、熱心に勉強会に出て人脈も作っている様だ。
 どうも二人の会話を聞いていると、大志には、楽して成功しようと言う魂胆を感じてしまう。信念を持って何が何でもやるんだと、腹をくくれば儂の仕事もはかどるのだが、大志は腰砕けの所がある。
「そうは言っても成功する人は、特別な才能のある人なんだ」「僕みたいな者が成功できる訳ないよな」と、口癖の様に言う。すると儂〝ポノ爺〟は絶対に成功させない様に、動かなければならないのだ。大志の気持ちに連動した働きしか出来ないと言う決まり事があるからだ。
 大家がうろうろすると店子の儂らは、無駄働きになるんだが。まことに残念じゃ。

 その点勇気君の店子の小人〝カカ〟は、働き甲斐が有るよな。着々と大家と店子がスクラム組んで、一つの目的に向かって進んでいるんだから。本当に儂は羨しい。
 その内、勇気君の店子の“カカ”は、その仕事が自分の手に負えないと思うと、仲間の小人を引き連れて来るからな。そうするともうこれは強靭なチームワークになって、勇気君の願望は、すぐ手の届く所まで来るだろう。儂は断言する。
 
「大志、しっかりしろ」と、働き者の小人 インナーチャイルド(★)の〝ポノ爺〟の嘆きはまだまだ続きそうだ。

 


★。
 通常その家来を使い切っている人は少なく、家来に使われ、振り回されている人が多いと言う事なのです。

-fin-

2014.9.1

【課題】 「吾輩は〇〇である」

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