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朱に染まれば赤くなりそう

 おとねと智美は同級生の仲良し、別々の会社に勤めだして1年が経つ。
シフォンケーキを上手く作れるようになったと言う事で、智美を自宅に招いたのだった。
「自慢するだけあって、さすが上手ね! このふんわり感って難しいと聞いているわ」と、智美は美味しそうにケーキを口に運ぶ。
「先生にも褒められたのよ。こんなに早くマスターする人は少ないって」紅茶はいつものダージリンが程よい香りを放つ。
「1年経って何か面白い話ある?」と、おとね。
「仕事覚えるだけで精一杯よ。足手纏いに思われない様にと必死よ」
おとね「智美らしいわ。いつでも優等生を演じるんだから」
智美「そんな事ないわよ。おとねの様に器用に何事もこなせないから、真面目にコツコツやるしかないのよ」
おとね「イカス男性がいたと思ったら、みんな妻帯者でしょう? 面白くないよね」
智美「おとねは余裕ね、羨ましいわ」
おとね「給湯室って面白い話いっぱいよ」
智美「どんな事?」
おとね「社内のい・ろ・ご・と・ば・な・し」 
智美「芸能界の事じゃなくって?」
おとね「身近に危ない綱渡りしている人がいるのよ。ご本人は隠している積りらしいけど、周りはみんな知っているの。上司と美人とか、ダブル不倫とか」
智美「へぇ! ちょっとおとねの勧めているその会社大丈夫なの?」
「わかんない!」とおとねは語尾をあげる。

 13歳下のおとねの妹今日子は、シフォンケーキ欲しさに、お皿とフォークをもってさっきから隣の部屋で、二人の話を盗み聞きしていた。
「こんにちは」と、襖を開けてぺこりと頭を下げた。
「ああ、びっくりした!」と智美。
「ノックしてから開けなさいよ!」と、
おとねに叱られて、今日子はペロッと舌を出して
「お姉ちゃんも、気ぃつけや!」
「ケーキあげるから、さっさと出て行きなさい!」
「は~~い」と、
にんまり笑う
「もうあの子ったら! 大人顔負けな事言うの。大人の中で育ったから、こまっしゃくれているのよ。でも勘が鋭いから怖い!」とおとねは首をすくめる。

-fin-

2017.2.1

【課題】 「やけにこまっしゃくれた子」を登場させる

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