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眼からウロコ

 大学時代の同窓会があった。80歳を迎え集まれる人は幸せな人達ばかりだ。一人で東京から大阪の心斎橋まで出かけて来られる人は元気な証拠だろう。これが最後かも知れないと言う事で20名が集まった。
 しばし想い出話に花が咲き、美味しい料理に舌鼓を打ち幸せな1日だった。同窓会も年齢により話題になる事が違ってくる。
 若い頃は、結婚、子育て、姑さんの事。
少し年数を経て、子供の学校の事、子供の結婚、孫の話と変化して行く。今や健康の話にウエイトがおかれても仕方がないのだろう。同級生で亡くなった友人の話などは、身につまされるが、ガンの話はどうしても見過ごせない話題だ。
 「ガン保険に入っている?」と一人が皆に投げかけた時だ。東京から来ている学生時代から才女だったMさんが言った。
 「そんなもの入ってないわ」
 「へぇ! あんた入ってないの?」とK子が驚いた様に言った。
 「そんな馬鹿らしいもの、入らへんわ!」とダメ押しするようにMさんは言う。
 「健康に自信あるんやね。今や大抵の人はガンで死ぬやんか。そりゃ入っておく方が安心やよ」とK子は念を押した。私は
 「どうして入らない方が良いの?」とMさんに尋ねた。
 「だって考えてもご覧よ。こんな高齢になって入ったら保険料は高い、それにガンになるかどうかも分からないでしょ?それだったら保険をかけていると思って自分でその額を積み立てしておく方が賢明よ」と涼し気に言う。私は〈成程!〉と思った。
 「そりゃ、保険は安心料と思えばいいんだけど、そこまで保険会社に設けさすことはないと思うのよ」とMさん。
「確かにそうやわね。Mさんは、いつも合理的やね」と、周りの4~5人が納得した。
「だから私は、泊り客用のお布団なんかも用意しないの」とMさん。
「だったら、もう誰も泊めないの?」
「ううん、1年に何回使うか分からないものに、スペースを占領されたくないから、レンタルをするの。その方が泊まる人も気を使わなくて良いでしょう」
「Mさん、さすがやね。この歳でそこまで合理的に考えるって、進んでいるわ!」と、拍手が起きた。
 何でも、いざの時を考えて用意をしている私は、眼からウロコの情報だった。
 掛け布団、敷布団、枕セット(シーツ、カバー共)3泊まで2千5百円。赤ちゃん用のベッド、海外旅行用のスーツケース、乳母車等々。何でもレンタル出来る。時代は様変わりしてきているのだ。

-fin-

2018.8.1

【課題】 泊まる

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